床屋の回が良い

小袋成彬さんの「Piercing」をずっと聴いている

 

他にもちょこちょこ気になった音源があるとそっちを聴くけど、気がつくとまたこのアルバムを聴いている。

 

初めはあまりしっくり来なくて、分離派の夏の方が好きだったなーなどと思っていたんだけど、聴きこむうちに好きとか嫌いとかの次元を超えてきた。いや間違いなく好きなんだけど

 

ストリーミングで音楽を楽しむようになってからアルバムを通しで聴く機会が減ったが、これは必ず1曲目のNight Outから最後のGaiaまで聴いている。ほんとにどの曲も好きで、かえってその中から切り取っておすすめしようと思えないほどだ。アルバムの良さを書き連ねたいし、それこそとても好きな瞬間が連なっている(自分にとっては)ドラマティックな作品なんだけど、他人の感想とか推薦が聴く人の妨げになってしまいそうな気すらしてしまう。

 

Tohjiや5lackという当代きっての天才ラッパーの参加曲もあるし、Kenn Igbiの軽やかなメロディや、また唐突にはじまる合唱曲やskit的に挟まる友人?との会話(これがとても心地よい)もあり、多様性に富んでいながらそのどれもが浮いていない。全体を通して30分ちょいという短さから通勤の片道で駆け抜けられるのもとても良い。

 

聴きこんでいると私自身の思い出やその時の心情とか、見ていた(ものとは異なるかもしれないが)風景などがふっと眼前に現れるような感覚になる。恐れていた通り文章にすると大変に安っぽい感想になってしまうが、そんな豊かな作品だと感じる

 

 

 

面識のない著名人でも明るい人柄の方や、世の中を少しでも明るくしようとする作品を残していた方が逝ってしまうと結構堪えてしまう。そして同時代にその方の明るさや作品に触れていたことが実は贅沢なことだったと知らされる

 

決して身近な存在でなかった人ですらこうなのだ。

 

「日常が奪われてから」「元通りの生活を」なんて言葉をよく目にするが、私たちは与えられたその次の瞬間から時間を奪われ始めて、ようやく手にした自由やお金や大切な存在もやがて必ずなくしてしまう。なくすことは決まっている。喪失は常につきまとうけれど、それゆえに輝かされている瞬間もあるはずだ。もし喪失がなかったら気遣いや思いやることは消え失せて自意識だけが肥大してしまいかねない。現実は気遣いや思いやることを忘れて喪失に至ることが多いのだけれど

 

怖がってばかりもいられない日々の中でこの作品に救われているなあと感じています。

 

あとようやく観れたAtlantaのシーズン2もすごく楽しい