「ハニー、俺だよ。寂しかったか?」

映画「ラッキー」を観た。

 

上映中も気になってたんだけど上映館数も少なくてなかなか都合も合わず、Amazonで借りてようやく鑑賞した。

 

名脇役ハリーディーンスタントンの遺作で、おなじくバイプレイヤーのジョンキャロルリンチの監督デビュー作。ジョンキャロルリンチで思い出すのはファーゴとかゾディアックです。

 

地味だけど地味なだけじゃない、かなり好きになった映画だった。上映時間も短く、ややまとまり過ぎてる節もあるけど。月並みだけどハリーディーンスタントンが立ってるだけで、喋るだけで絵になる。というか絵そのものだ。何を言ってるんだ俺は。

 

頭からエンディングまでほぼすべてのシーンが好きなんだけど、特に良かったのは飲み屋で会う友人(演じるのはなんとデヴィッドリンチ!)が大切な亀、もといリクガメについて語るシーンと、心配で様子を見にきた女の子と一緒にテレビでリベラーチェを観るシーン。

 

リアリストで皮肉屋な彼の詳しい素性や背景は細かく語られないし(心情を吐露するシーンはある)、無条件でみんなに愛されるようなキャラクターでもない。要所で差し込まれる死(あるいは無?)のメタファーは不穏そのものだ。それでも一度敵対した人間にも扉を閉ざさないし、突き放しているようで慈愛の一片を忍ばせるような他人との交流が素晴らしい。そのラッキーの姿勢は、終盤のある人物とのやりあいの中で明確に言葉にされる。

 

感想書いてたらまた観たくなった。ジャームッシュ好きな方はぜひ。